note創作大賞2025、数多の応募作の中でも異彩を放つ作者がいる──その名はしょう氏。
現場職人として働きながら、noteで3本の連載を同時進行させ、いずれも高いクオリティと反響を得ている。
笑って泣けてゾッとする。現場のリアルを知る人も、まったく知らない人も心をつかまれるその筆力。
この記事では、しょう氏が手がける3つの連載作品『クソ野郎、現場に立つ』『現場あるある大辞典』『現場怪談』を紹介しつつ、本人への取材内容もまじえながらその魅力を深掘りしていく。
はじめに:noteで話題沸騰中の「現場系創作」
note創作大賞2025に応募された作品群の中で、異彩を放つ存在がある。それが、現場職人・しょう氏による創作作品群だ。
建設現場でのリアルな人間模様を描いた『クソ野郎、現場に立つ』をはじめ、笑いと共感の『現場あるある大辞典』、そしてじわじわと不安を煽る『現場怪談』まで──すべてが現場という一つの舞台から生まれているのが驚異的だ。
『クソ野郎、現場に立つ』──現場で生きる男たちの汗と怒号
まず注目したいのは、代表作とも言える『クソ野郎、現場に立つ』。
借金まみれで職を転々とする主人公・将太が、ヤクザじみた田中のもとで“再起”を図る物語だ。だがその道は、理不尽と暴力と笑いに満ちた壮絶な日々──。
魅力①:キャラが濃すぎる
女に食わして貰ってる、風呂入らない、歯磨きしない、でも懸命に生きている将太、パワハラの権化の田中、世界一偉そうな腰巾着の龍介、自分の都合で将太に手を差し伸べる坂口兄弟など、一度見たら忘れられないキャラの宝庫。
魅力②:現場用語や労働風景のリアル
実体験に基づく描写は、読者をまるで現場に立たせるような臨場感を与える。
魅力③:不意に笑わせるセンス
ジャグラーの台に座る若者を睨んでどかせて大勝ち → 焼き肉で天国 → 焼いてる最中に呼び出されて地獄。この落差がクセになる。
『現場あるある大辞典』──笑いと共感のオンパレード
しょう氏のもう一つの連載、『現場あるある大辞典』は、全ての建設現場経験者に刺さる作品。
「あるある過ぎて笑えない!」「うちの現場にもこんな奴いた!」という声がコメント欄を埋め尽くしそうなほど、ネタのリアリティが桁違い。
汚すぎる仮設トイレ
実は大してできないのに偉そうな大工
休憩所で隠れてエロ本を読む爺さん職人 など、思わず「わかる……」とつぶやいてしまうネタが続々登場。
『現場怪談』──現場に潜む闇と“静かな恐怖”
しょう氏は、なんとホラーまで描ける。
現場で実際に語り継がれているようなエピソードをベースに、不気味な余韻を残す作品群。それが『現場怪談』だ。
次の見出しで各おすすめのエピソードを紹介する。
しょう氏連載作品からおすすめエピソードを3つ紹介!
クソ野郎、現場に立つ第5話「俺、大工の命である道具を盗まれる──地獄の底に垂れた“期待”の糸」

道具盗難という大工にとっての“致命的事件”が発生
→ 命綱を奪われた主人公が味わう絶望と喪失感がリアル。
助けを求めた相手の“軽薄な反応”に怒りが湧く展開
→ 「100万は無理やなあ!」というセリフが胸に刺さる。
マキタ派VSハイコーキ派──工具に宿る職人のプライド
→ ハイコーキを押し付けられて曇る心情が、現場の“あるある”として面白い。
「媚びてもいい、生き延びるために」──誇りを捨てた決意
→ 人間の生存本能とリアルな変化がドラマチックに描かれる。
「クソ野郎の現場あるある大辞典 #7 大工と大八――そして神施主とは」

“大八”という衝撃ワードで炙り出す、職人界の“地雷系”大工
→ 技術も責任感もないのにプライドだけ高い“大八”の実態が笑えて恐ろしい。
「昔は神」だった大工の今──現代の大工像とギャップ描写が秀逸
→ 昔話にすがらず、現実を受け入れる“今どきの良い大工”像との対比がリアル。
建築業界を生き抜く“ガチャ”要素としての大工と施主の当たり外れ
→ 「大工ガチャ・施主ガチャ」というネット的視点で業界を斬る切れ味の鋭さが面白い。
「道具・車・言動」すべてにクセが詰まった“大八あるある”が爆笑必至
→ 「レクサス乗ってた」「味がある道具」など、妙にリアルでニヤける小噺が満載。
現場怪談 #6「ナベさん怪異録 :「光の差す部屋」

ナベさん怪異録とは、イケオジ大工のナベさんと若手監督の高橋が、大工の仕事を通じて、怪現象や家に立ち込めた悪い気のようなものを解決していく話。
このエピソードは、「ただのリフォーム」ではなく“空間に祈りを込める”という職人の哲学
→ 壁を壊す工事にとどまらず、“亡くなった子の心を救う空間再生”に昇華する展開が感動的。
死の気配が染みついた部屋を“生きる空間”へと変えていく再生の物語
→ 北向き・狭い・黴臭いという絶望的な空間が、光と風の通る部屋へと生まれ変わる過程にドラマがある。
職人ナベさんの感受性と覚悟が“ホラー”から“ヒューマン”へ物語を転化させる
→ 少年の無念の気配を感じながらも逃げず、向き合い、施主の心まで解きほぐしていく姿が胸を打つ。
「空間は変えられる」──現場に立つ者だけが語れる、静かな名セリフ
→ 遺された家族への弔いと救いを、言葉と仕事で体現するナベさんの姿に深い余韻が残る。
このエピソードは、「ホラー」の仮面をかぶった「弔いと再生の職人譚」として、シリーズの中でも異彩を放つ名作です。ガチで泣きました。
しょう氏はChatGPTを使用して執筆している?!
実はしょう氏、AIツール(ChatGPT)を併用しながら執筆しているという。
ただし、プロットやキャラクター造形、ストーリー展開はすべて自分で作っているとのこと。AIはあくまで「補助輪」──それでも現場語や方言、スラングが自然に活きているのは、本人の言語センスあってこそだ。
本人にお話を伺ってみた。
DMで記事にする旨をお話ししたところ、戸惑いながらも快く承諾してくださいました。ついでにいくつかの質問にも答えてくれました。
やはりしょう氏は現役の大工だった。
奥様と小さなお子さんがいる家庭持ちで、仕事と家事をこなすかたわらで、AIツールを活用してこのクオリティの連載をわずか2ヶ月足らずで複数本並行更新中というのだから驚きである。
さらに驚いたのは、【現場ユニバース】と銘打って、将太が異世界に転生する『現場転生』、坂口裕貴を主役にした『現場恋愛』という、めちゃくちゃ面白そうな構想まで存在していること。
しょう氏曰く「フォロワーが増えたら、仕方なく書くかもしれません(笑)」とのこと。これはもう応援するしかない!
まとめ:この人は“もっと評価されていい”
しょう氏の作品は、いずれも
現場経験者ならではのリアリティ
キャラの魅力
文体の自然さ
地味に笑えるセンス
そして意外なホラーセンス と、多才すぎる武器をいくつも持っている。
note創作大賞の枠を越えて、もっと広く評価されてほしい作家の一人だ。
読めば分かる。きっと、あなたも「しょう氏」の「現場の」ファンになる。
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