2025年5月、福岡県で78歳の女性が詐欺容疑で逮捕されました。
彼女が使った手口は「高金利が得られる」という“おいしい話”。しかしその裏には、信頼を利用した巧妙な詐欺が潜んでいました。
今回はこの事件の概要と、そこから見えてくる高齢者犯罪の実態、そして誰もが被害者にならないための対策について解説します。
信じていた相手に騙された──福岡で起きた詐欺事件の概要

福岡県筑紫野市に住む83歳の女性が、知人である78歳の女性から「実在する経営者に渡す金が必要」「高金利で返ってくる」と言われ、現金300万円を手渡しました。
ところがその話はすべて嘘。実際には経営者など存在せず、資金は容疑者自身が使っていたとみられています。
驚くべきことに、容疑者は少なくとも22人から約2億円超を集めていた可能性があり、詐欺の常習性が疑われています。
事件を止めたのは「息子の一言」

事件が明るみに出たきっかけは、容疑者の50代の息子による通報でした。
母親から「お金を貸してほしい」と言われた息子が理由を問いただしたところ、「知人に配当を返す必要がある」と説明。これを不審に思った息子が被害者に連絡し、「母があなたを騙している」と伝え、警察に通報したのです。
家族の目が、詐欺の連鎖を断ち切りました。
これは“ポンジスキーム”型の詐欺だった
この事件は、まさに**ポンジスキーム(自転車操業型詐欺)**の構造です。
ポンジスキームとは?

実体のない投資話をもちかける
新たな出資者から得た資金で、過去の出資者に“配当”を支払う
一見儲かっているように見せかけて、信頼を得る
新規資金が途絶えた瞬間に崩壊する
つまり、「誰かから金を引っ張ってきて、それを別の人に渡す」だけの虚構の投資話だったわけです。
データで見る:高齢者による犯罪は本当に増えている?
警察庁の統計によると、刑法犯全体は年々減少していますが、高齢者(65歳以上)の犯罪検挙数はほぼ横ばい、もしくは微増です。
特に目立つのが、詐欺・窃盗・万引きといった“生活型犯罪”。
年度 高齢者の刑法犯検挙者数 特徴
2010 約4万人 万引き・窃盗が中心
2020 約3万人 全体的に減少も、比率は上昇傾向
2023 約2.8万人(推定) 詐欺・名義貸しなど巧妙化

「お金がない」「孤独だ」「昔からの付き合いで断れない」──こうした背景が、高齢者の犯罪関与を後押ししています。
あなたや家族を守る!詐欺の見抜き方と対策

詐欺は他人事ではありません。自分や家族が騙されないために、次のようなポイントを意識しましょう。
詐欺を見抜く4つのチェックリスト
1. 「必ず儲かる」「絶対大丈夫」は疑え
2. お金の話が出たら、必ず家族や第三者に相談
3. 「他の人には内緒」は危険信号
4. 具体的な仕組みを説明できない投資話はアウト
家族ができること
定期的なコミュニケーション(特に一人暮らしの高齢者に)
金融リテラシーを共有する(「投資詐欺ってこういうのだよ」と話す)
いざというときに相談できる空気づくり
まとめ:信頼が“罠”になる時代に、私たちがすべきこと
今回の福岡の事件は、「知人だから」「昔からの付き合いだから」という信頼が逆手に取られた典型例です。
しかも、犯人もまた高齢者だったという現実は、社会全体が抱える“高齢化と孤独”の問題を浮き彫りにしています。
詐欺を防ぐためには、仕組みを知ることと、周囲とつながること。
誰かの「ちょっとおかしいかも」という感覚が、大きな被害を防ぐ第一歩になるのです。
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